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「……」
私は食べかけのゼリーから三浦さんへとゆっくり顔を上げる。
「もうすぐ南条さん帰ってこられますし、夜は新年会があるので、その後でもいいからちゃんとお話をしたほうがいいと思いますよ」
「……う」
なにもかもお見通しみたいな三浦菩薩の微笑みが、私の涙の膜でキラキラと光を放って見えた。
菩薩様もいろいろあったのだろう。
いろいろあって、それを乗り越えてこられたのだろう。
「三浦さん……羽島課長にはもったいないわ」
「ちょっ――、小宮さん、人には口外するなって言っといて、そんな他の人に聞こえる声で言わないでくださいよ」
そうだ。普通にしよう。
普通にして、ちゃんと「お帰りなさい」と言って、ちゃんと自分の気持ちを言って、ちゃんと南条さんの気持ちを…………聞こう。
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