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緩みきった顔を俯けていたものだから、気付いた時には南条さんが目の前まで来ていて、同じ目線までしゃがんで顔を覗き込まれていた。
「…………」
ぐは。
風呂上がりの、髪の湿った、同じシャンプーの匂いがする……南条さんのアップ。
その目で至近距離から射抜かれたら、もう……。もう…………。
「今日、他の男性社員が廊下で小宮さんのことを話していました。最近痩せてキレイになったと」
「へ?」
南条さんが私の胸の前にあるなにやら結び目のようなものをゆっくりとほどく。
「たとえば、辻森さんでも、彼以外の男性でも、交際を申し込まれたら何て言って断るんですか?」
肩が一気に軽くなった。
パサリと何かが私を囲むように落ちて、横目でその黒い塊を見てようやく、私は先程の自分の行動を思い返す。
「…………」
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