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10秒。
頭を撫でられている秒数を胸の中で数えたら、10秒だった。
ゆっくりと髪を伝って頬へ下りてくる南条さんの手のひら。
私はそのあまりのゆっくりさにいたたまれなくなって、その手に自分の手を添えると、そっと頭の重みを南条さんの手のひらに移して、顔を俯ける。
「…………懐かしい」
「なにがですか?」
髪にかかった微笑みの吐息に見上げれば、南条さんは私の頬を親指の腹で撫ぜて、
「……大福」
と言った。
「……」
いやいや、わかってますよ。
わかってるけど、こんな場面でそんな……。
「“見つめあったまま近付いてキス”でしたっけ?」
「……っ!」
口角を上げたままの南条さんの顔が間近に迫ったかと思うと、それはそれは優しい触れるだけのキスが唇に置かれ、すぐに離される。
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