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「……好きです」
想いが心のふちからこぼれて、意図せず声に出していた。
ポロポロと涙まで溢れて耳元へと伝い、こんな場面なのに私の顔をくしゃくしゃに歪ませる。
南条さんは、涙まみれの私の目元に唇を寄せ、
「電話以外で初めて聞きました」
と言った。
そして耳元で、彼もそっと愛を囁いてくれた。
夢とうつつの境目がわからないくらいの幸福感と、ゆっくりなのに無理やり起こされる繊細で鮮明な感覚。
前後不覚で切羽詰まったその体と心は、追い詰められるほどに彼の体温を欲して、漏らす吐息を一層深くさせる。
彼に触れることに許可なんていらない。
そのことがこんなにも嬉しいものだなんて、初めて知った。
散り散りになる意識の中で、私は、足の裏から髪の先まで、自身が女であることを喜んでいるのを感じた。
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