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「……しーちゃん」
予期していなかったワードが斜め後ろから聞こえ、私はパチッと音が出るほど勢いよく目を開ける。
「えっ!?」
思わず声を上げて顔だけ振り向いてしまった。
「……あ」
抑揚もなくそう言った南条さんと目が合った。
布団を半分被ったままの姿、少しだけ寝癖っぽく無造作になっている髪にドキリとしたものの、問い質さずにはいられない私は、
「な、なんですか? 今の……」
と、うろたえながらも聞いてみる。
「練習です。呼び方の」
「……へ?」
「昨夜、妹さんに聞いたので。小宮さんの愛称」
遮光カーテンからほのかにこぼれる朝の光をまとい、南条さんは淡々とそうおっしゃった。
「……」
私は固まったままでその言葉をかみ砕く。
あ……愛称?
ちょっと待て。
“しーちゃん”なんて、小さい頃お母さんにしか呼ばれたことないのに……。
……あーちゃん、あんにゃろうめ……。
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