side K-2

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「……しーちゃん」 予期していなかったワードが斜め後ろから聞こえ、私はパチッと音が出るほど勢いよく目を開ける。 「えっ!?」 思わず声を上げて顔だけ振り向いてしまった。 「……あ」 抑揚もなくそう言った南条さんと目が合った。 布団を半分被ったままの姿、少しだけ寝癖っぽく無造作になっている髪にドキリとしたものの、問い質さずにはいられない私は、 「な、なんですか? 今の……」 と、うろたえながらも聞いてみる。 「練習です。呼び方の」 「……へ?」 「昨夜、妹さんに聞いたので。小宮さんの愛称」 遮光カーテンからほのかにこぼれる朝の光をまとい、南条さんは淡々とそうおっしゃった。 「……」 私は固まったままでその言葉をかみ砕く。 あ……愛称? ちょっと待て。 “しーちゃん”なんて、小さい頃お母さんにしか呼ばれたことないのに……。 ……あーちゃん、あんにゃろうめ……。
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