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「はーーー」
短時間の支度で用意したそれでも一番新しい部屋着であるジップアップパーカーとガウチョパンツ姿の私は、その色気皆無の自身を見てため息をつき、それでも好きな人のプライベートな空間にいるという事実にまた違うため息をつく。
「あ」
横に目をやると、ソファーの背もたれに南条さんのコートがかかったままになっていた。
勝手に触っちゃダメだと一度視線を戻した私は、いやいや彼女なんだしハンガーにかけるくらいはいいだろう、と自分にツッコみ、そおっとその黒いコートに手をかける。
「……」
大きな男物のコートの重みに、私は言いようのない幸せとトキメキを感じて、じーんとなった。
「…………彼女、か」
自分で呟いておいて恥ずかしくなった私は、そのままそのコートに顔をうずめる。
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