side N

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手を引っ張るものだから、されるがままにその様子を眺めていると、彼女は俺の手のひらに自分の頬を預けて、 「あー、南条さんの匂い、好きだなぁ」 と呟き、また目を閉じた。 心と体の強張りを解いて欲しいと思ったのは、はたして何時間前だっただろうか。 「そうですか」 そうとしか言いようがないのでそう返し、素面の小宮さんも少しだけでいいからこういうところを出してくれたらいいのに、と心の中で呟く。 「……」 あぁ…………、でも……そうか。 コートもそういうことか。 初めて合点がいって、まったく違うような人格に見えても本当は融合しているのだと気付かされる。 そしてまた、昨夜の俺のコートに包まれた小動物みたいな彼女の姿を思い出してしまい、胸の中をくすぐられたような説明しがたい気持ちになった。
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