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そして何も反応がないのをいいことに、ほんのり桜色になっている頬にまで指を下ろし、親指の腹でゆっくりとその起伏をなぞった。
あの時は、こうやって朝の小宮さんに触れることができるなんて思ってもいなかった。
あの後目を覚ました小宮さんとの初めてのキスも、彼女に言わせた無理やりな“好き”という言葉も、そして自分の心持ちも、今のこの状況と幸福感を引き合いに出せば比にもならない。
「……小宮さん」
起こしたいような起こしたくないような気持ちの狭間で、とても小さな声を彼女に落とす。
うっすら細目を開けた小宮さんは、まだ夢見心地のような柔らかい表情で俺の顔を見て、その頬を一層ふにゃりとさせて顔を綻ばせた。
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