side N

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「羽島課長、2番にお電話入ってます。野木原ホームの専務からです。あ、奥様が先週退院されたそうです」 「古賀さん、古賀さん! これっ、この前言ってたアップルパイの店。富谷建設の社長さんが食べたいって言ってたやつ。プリントアウトしたから、地図見て行きがけに買って行ったら喜ぶかも」 「杉中さん、それコピー? 何部? 私やっとくよ」 しかしまぁ……。 よく動く人だ。 パソコンのキーボードのエンターキーを小指で押した俺は、嫌でも視界に入ってくる小宮さんへ視線だけ移し、感心する。 梅原さんが有給消化で既に退社同然のため課長の補佐もしている彼女は、それでも笑顔でテキパキと仕事をこなし、たまに言われずとも周囲の世話を焼いている。
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