side N

13/20
前へ
/32ページ
次へ
「はい。……はい。わかりました。えっと……、こういうことですよね?」 説明を聞き終え、パソコン画面を覗き込んでマウスに触れた彼女。 ふわっと微かに香った髪の匂いに、急に詰められた距離を理解する。 画面の光を反射している、何度も瞬きする瞳。 意外と長いその睫毛。 ほんの少しだけ開いた艶のある唇は、やや厚めでぷっくりしている。 頷くことで少し癖のある細い髪がふんわりと顎の下で揺れ、間近で見る小宮さんの無防備な横顔に、業務中だということを一瞬だけ確かに忘れた。 「なるほど。わかりやすくなりました。南じょ……」 「……」 「うわっ! すみませんっ」 こちらを向いたことで距離感に気付いた彼女は、コントのようにのけ反って、後ろを歩いていた羽島課長にぶつかった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3137人が本棚に入れています
本棚に追加