side N

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「イテ」 「わあっ、こっちもすみませんっ」 挙動不審に課長に謝り、こちらを向き直った小宮さんは、 「なんか……なんだかすみません、ホント」 と再度頭を下げた。 下げられた頭の、丸みを帯びたその柔らかそうな髪の毛を見て、妙な気持ちになる。 「……」 …………なぜ? そう思って俺は自分の右手をじっと見た。 「小宮さん、すみませーん、トナーどこでしたっけー?」 「あっ、はーい!」 そうこうしていると、彼女はまた借り出されてしまった。 「…………」 ニャアー……と、頭の中をモカが一鳴きし、横切っていく。 ……そうか。 小走りであちらへ向かう小宮さんの後ろ姿を見て、 「…………猫だからか」 と呟き、再度自分の右手に視線を落とした。          
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