side N

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決して、その事柄自体に過敏に反応したわけではない。 ただ、頭に小さく雷が落ちたのだ。 小宮さんが女性であるのだという、当たり前で分かりきっていたことをまさに今はっきりと自覚して。 「…………」 ドラッグストアの鎮痛剤売り場の前で、しばらく呆然として立ちすくむ。 先程、食事会の最中、彼女の頭に一瞬間だけ触れた。 あれだ。 また、あれがきたのだ。 柔らかそうな毛に無性に触れたくなる衝動。 猫に対するそれと同じ、あれだ。 「…………」 …………同じ?  ………………本当に? 『…………生理痛です』 小宮さんの恥ずかしげで俯きながらの言葉のリフレインに、ひとつの鎮痛剤に指をかけたまま固まる。 脳内では、それこそコントよろしくそのまま棚に頭ごと突っ込んでしまっていた。 …………変態か? 俺は。
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