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それから車に戻って小宮さんに薬を渡し、彼女の家に辿り着くまで、俺はどこか半分上の空だった。
「お腹のほうは、もう大丈夫ですか?」
彼女のマンション横の歩道脇に車をつけ、運転中はよく見ることができなかった彼女の顔色を確認する。
「はっ、はいっ! おかげさまで、すこぶる良くなりました」
「そうですか」
「はいっ、ありがとうございました!」
声を張って礼を述べる彼女の頬は、薄暗い車内でも薄ピンク色を取り戻していることがわかった。
安堵した俺は、なぜかまた思わず右手がピクリと反応し、次に発する言葉を見失う。
「……」
「……」
目を合わせたまま数秒の沈黙を持て余して、妙な空気になる。
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