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…………なぜだろうか。
なぜ、その頬や髪に触れたくなるのだろうか。
そしてなぜ、その頻度やターンが、多く、早くなっていくのか。
彼女は女性なのに。
猫ではないのに。
「あの……、それじゃ……」
「小宮さん」
「へっ?」
助手席のドアを開けた彼女の頓狂な声よりも、自分自身がまず驚いた。
気付けば俺は、彼女の肩に手をかけ、呼び止めてしまっていた。
「……な、なんでしょうか?」
振り向いた彼女の、身を縮めるようなおどおどとした声と様子。
怖がらせてしまったことを理解した俺は、即座に謝り、手を離した。
途端。
彼女の頬に触れた感触。
彼女の髪に触れた柔らかさ。
彼女から抱きつかれた時の密着感。
俺の頭を撫でた時の笑った顔。
それらが一気に頭に甦り、同時にぶわっと自分の心臓を持ち上げたような感覚に襲われた。
高揚と寒気が同居したその言い表しがたい心持ちに、軽い眩暈を覚える。
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