side N

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「……」 ……いや、別に、なんら構わない。 むしろ、ムードメーカーの参加は、会話の弾まない俺にとってはありがたいことだ。 「……楽しみにしていますね」 けれども、そう言った自分の口に違和感を覚える。 彼女に挨拶をして車を出してからも、その口に指を置き、その複雑な心情を持て余した。 「……」 …………疲れているのだろうか。 どうも冷静さを欠いている気がする。 小さなことが気になったり、自分の気持ちが理解不能だったり、苦し紛れとはいえ自分から他人を食事に誘ったり……。 赤信号で停まり、目頭を押さえる。 すると、先程帰り際に時峰さんが小宮さんにえらく近付いて耳打ちしていた場面が甦った。 彼女は頬を染めていた。 「…………」 やはり……疲れているんだ。 いつもはどれもこれも、些細なことに過ぎないはずだから。      
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