side N

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外へ出る扉を開けると、冷たくて湿気を帯びた風が迎えた。 天気予報では一日天気は良いはずだった。 2階から階段を下りきると、仁科さんは俺と向き直って、 「有意義な時間でしたし、楽しかったです。おつきあいいただき、ありがとうございました」 と笑顔で言い、頭を下げる。 「いえ、こちらこそ」 「南条さん」 下げた頭を起こした彼女は、すかさず笑顔でケータイを差し出した。 「……何ですか?」 「連絡先知らないので、教えてくださいませんか? また仕事の件でご相談……というかご教授願いたいんですけど。ご迷惑ですか?」 軒下だけれど、風に混ざって小雨が霧みたいに頬を掠める。
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