3137人が本棚に入れています
本棚に追加
外へ出る扉を開けると、冷たくて湿気を帯びた風が迎えた。
天気予報では一日天気は良いはずだった。
2階から階段を下りきると、仁科さんは俺と向き直って、
「有意義な時間でしたし、楽しかったです。おつきあいいただき、ありがとうございました」
と笑顔で言い、頭を下げる。
「いえ、こちらこそ」
「南条さん」
下げた頭を起こした彼女は、すかさず笑顔でケータイを差し出した。
「……何ですか?」
「連絡先知らないので、教えてくださいませんか? また仕事の件でご相談……というかご教授願いたいんですけど。ご迷惑ですか?」
軒下だけれど、風に混ざって小雨が霧みたいに頬を掠める。
最初のコメントを投稿しよう!