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でもその時、よせばいいのに最後にちらりと見てしまう。
そして微笑んでいる彼女と目が合ったような気がした。
「……っ!」
不自然なくらいにパッと傘で視界を遮った私は、いっそう足を速めて通り過ぎる。
目が合ったと思ったけれど、気のせいかもしれない。
だって彼女は顔色ひとつ変えなかった。
もしくは、こんな地味な顔なんて覚えていなかったのかも。
うん、そうかも。そうだ。そうに違いない。
「はーーーー」
店からけっこう離れ、傘を普通の位置に戻した私は、少しだけ空を仰いで息を吐いた。
おー、痛い。
イタタタタ……。
まだかさぶたにもなってないってのに、目の当たりにするには早すぎじゃありませんかね、神様。
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