side N

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「羽島課長は……」 「なに?」 「恋愛も器用なほうですか?」 運転中の課長は、何も飲んでいないのにゴホゴホとむせた後、 「なんだ、その質問」 と怪訝な顔をして言った。 今日は土曜日。 大手5社とカナダの有名デザイナーとの共同企画である展示会へ向かう途中だ。 古賀さんも来ることになっていたが彼は風邪を引いたらしく、羽島課長と俺と、今から合流する三浦さんの3人で参加する。 「恋愛に興味なかったんじゃなかったっけ? 南条は」 「そうですね」 「気になる相手でもできたわけ? それとも遊びだった女にしつこくつきまとわれてんの?」 「前者です」 「マジか。赤飯ものだなそれは。以前話した時には、本命なんて到底できなさそうだったのに」 「そうですね」 助手席から見た課長の横顔が、ほんの少し優しくなる。 ハンドルを切って細めの道に入ると、コンビニの看板が見えてきた。
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