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やだっ!
そう思った自分とガタンッという音にびっくりした。
気付けば私はバランスを崩し椅子から落ちそうになっていて、かろうじて足で踏ん張った。
視界に入る、南条さんの顔。
こっちを見てる。見てる。見て……。
「大丈夫ですか? 小宮さん」
「うん、だ、大丈夫」
ハッとして、差し伸べられた三浦さんの手を取り、体勢を整える。
顔が熱い。
お酒のせいじゃなくて、恥ずかしすぎて熱い。
……嫌だ、と思った。
思ってしまった。
南条さんが三浦さんのグラスを使うのが。
自分は平気で古賀さんなんかと回し飲みするくせに。
10代か? 私は。
「その部分、絶対に口付けないで死守しててください。そんで、あとで私にひと口ください」
三浦さんに自分の気持ちを茶化しながら冗談ぽく小声で言うと、彼女は少し呆れた顔をして微笑んだ。
言えない。
本気で三浦さんに嫉妬したなんて。
……言えない。言えない。
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