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「イタリアンのお店で偶然会って以来ですね」
あいかわらずニコニコしながら、隣に座ってこちらを見る仁科さん。
「そうですね」
と返すと、
「今日はご一緒じゃないんですね、小宮さんは」
と聞いてきた。
「そうですね」
同じ相槌ばかり繰り返している俺は、ソファーに背をもたせかけながら目の前のローテーブルを眺める。
クスッと笑ったような気がした彼女は、小首を傾げてこちらを覗き込んだ。
「あの、傘、一旦取りに帰ってから、今日中にお返ししたいと思うんですけど、いいですか?」
…………。
今の今まで忘れていた、彼女に貸した傘という存在。
やはり面倒な気持ちのほうが大きい俺は、
「あぁ……もうあの傘はいいですので、差し上げます」
と答える。
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