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速人はジッポでカーテンに火を付けた。下から上へ炎は勢いよく跳ね上がる。燃え落ちたカーテンの破片がベッドのシーツの上に落ち、そこにも炎は広がった。全開に開け放った窓から大量の煙が狼煙のように流れ出し、部屋中に焦げ臭い匂いが広がる。
すぐに炎は部屋中を駆け巡り、窓の外にも溢れ出していく。
ちょっとやり過ぎたかもしれないな。速人は思いのほか広がる炎を見てそんなことを思った。
しかし、これなら合図には申し分ないはずだ。
あらかじめドアのそばで待機していた茜と由紀を促して、部屋の外に飛び出した。
まだ宿舎内は騒ぎになっていない。防火施設などは整っていないようで、スプリンクラーなどが作動する様子もなかった。違法な建築物には違いないがそんなことは些細なことだ。この島自体が化け物どもの巣窟なのだから。
速人は茜と由紀を伴い、廊下を走っていく。その時、外から銃声が聞こえる。一度ではなく何度も。窓から外を見ると、ニコたちが走っているのが見えた。
合図はうまく伝わったらしい。にわかに宿舎内が騒がしくなる。狙い通りだった。
幾つかの角を曲がると、茜たちが捕らわれていた部屋の前に辿り着く。その時だけ、速人は茜と由紀の後ろについた。銃で脅しながら歩かせている振りをする。そこには先刻と同様、見張りの男がいた。銃声が聞こえたのかさすがに今は座ってはいない。
「おい。外で何かあったみたいだぞ。それに何だ? この焦げ臭い匂いは?」
男は速人に向かって言ったが、速人は首を横に振って何もわからないといった仕草をした。
「とにかく女どもを部屋に戻せよ」
そう言ってドアを開けようとして、背を向けた男の頭に速人は四十五口径を押しつけ、引き金を引いた。ドアが開き、それに続いて男が前のめりに倒れる。速人はその体を足で部屋に押し込み、もう一発撃ち込んだ。男が持つM4カービンを奪い、予備の弾倉をマガジンポーチから抜き取る。そして流れるような動作で銃床、いわゆるテレスコピック・ストックを適切な長さに調整する。M4A1は一発ずつ発射するセミオートと連射が可能なフルオートが選べるが、速人はセレクトレバーをセミオートにあわせた。
建物の外から聞こえてくる銃声はさらに激しさを増していた。慌ただしく階段を降りる音や、怒号が耳に飛び込んでくる。
「少しここで待ってて」
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