第45話

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 速人は茜と由紀を部屋に残して廊下に飛び出た。見える範囲には誰もいない。窓から再び外を見るとニコたちが釘付けにされているのが見える。  早く援護しなくては。入り口付近には七人ほどの敵がいた。何人かが地面に倒れているのが見える。ニコが倒したのだろう。敵があまり組織だって動いてないのを見て速人は鼻で笑った。しかしあまり時間はない。外に狩りに出て行っている連中も戻ってくる可能性もある。  その時、階段の方向から足音がするのを速人は聞き取った。まだ宿舎内に残っているヤツがいるらしい。角を曲がって、現れたのは教官役と思われるシフターだった。 「黒田! こんなとこにいたのか。人間どもが攻撃してきたよ。何を考えているんだか」  その男はまるで危機感を感じていないようだった。 「若山所長が視察に来てる時にこんなことが起こるなんてな。逸見さんの青くなる顔が見物だよ」  若山って誰だ? 速人は記憶を探る。すぐに思い出した。研修所の所長だったはずだ。直接、話したことはないが開講式で挨拶していた男だ。  あいつが一応、この場ではボスなのか。  視察に来ていると言う言葉から、屋上にあるヘリのことに考えが及ぶ。 「それで若山さんと逸見さんは?」 「二人とも研修生が狩りに言っているのを直接、見に行ってる。さっき連絡したところだ。じきに戻ってくるだろう。それより外のヤツらを倒してこいよ。お前はもう合格点には達しているが、一人でも多くしとめておいた方がいいぞ」  アドバイスありがとう。速人は心の中で舌を出した。確かにその通りだ。敵は一人でも多く殺しておいた方がいい。 「あれを見てください」  速人は窓の外を指差して言った。男は窓に近付き、よく見ようと首を前に出した。  外に向けてM4の狙いを付ける振りをし、素早く男に向かって銃口を向ける。すぐに連続でトリガーを引く。最初の銃弾が男の頬を貫き、次の銃弾がこめかみに命中した。倒れる男の頭に向かって更に銃弾を叩き込む。さらに動かなくなった男の喉仏を踏み潰した。 「仰るとおり、敵は一人でも多く殺しておかないとね」  速人は死体に向かって話しかけた。当然のことだが、返事はなかった。
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