第1章

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「兄ちゃん!短い間だったけどありがとね!」 小さい子供が俺に思いき抱きついてくる。 「気にすんなって。元はと言えば、反対側隣のあの頑固爺さんが変なことばかりで文句言ってるだけなんだから」 俺はその頭を撫でながらのんびりと言う。その子供の母親が苦笑しながら子供を俺から引き離す。 「それでも私達だけでは対処しきれなかったので助かりました」 そう言い、母親も頭を下げる。 「だからそんなに畏まらなくていいですって。俺としたらもう慣れたことなんですから」 照れくさくなり、頬を掻きながら言う。 --そう、俺にとってはもう慣れたことだ。隣に住んでいる家に住む人が入れ替わり、その度にその家の反対側隣の爺さんが文句を言うのも、俺がその仲裁に割って入るのも。もう物心ついた頃からやっている。だから慣れた。
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