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「おはよう」
校舎のあちこちで朝の挨拶が交わされるのはここ、私立聖ヶ丘高等学校の朝の日常である。
市内有数の進学校である聖ヶ丘高校は特進科、進学科、普通科、体育科の四学科があるがどの学科も混合でクラス分けがされ、HR以外はそれぞれの学科がそれぞれの教室に分かれて授業が行われる珍しい学校だ。
「おはよー」
教室はすでに多くの生徒が登校している。
「優衣、おはよー」
「おはよ、明」
「今日の宿題やった?」
「実は……」
明は真っ白なノートを広げた。
「アンタねぇ……」
呆れ顔の優衣に明は頭を下げた。
「優衣、お願い! 今日あたし当たりそうなの! 教えて!」
一生のお願い、と手を合わせた明に「何度その手を使うのよ!」と言いながら優衣はノートを差し出した。
「ありがとぉー優衣。ほんとに助かる」
「報酬は駅前のドーナツ屋の奢りね」
「……わかってるよぅ」
そう言いながら明はノートを写し始める。
優衣と明は幼なじみだ。
茶色がかったロングのストレート、背は小さいが整った顔立ちで成績優秀、スポーツ万能で特進科なのが優衣。
明はショートカットで目鼻立ちがはっきりしていて、長身でスタイル抜群。成績は普通だがバレー部所属で将来有望なスポーツ科。
二人の仲の良さは有名だ。
「優衣、明、おはよ」
声だけで分かる。龍雅だ。
「龍雅!」
パッと声を明るしたのは明だった。明は龍雅に好意を寄せている。
「朝からまた宿題写してるの? ねぇ優衣、俺も写していい?」
「いい訳ないでしょ、バカ」
「優衣はケチだな」
「アンタがバカなのが悪い」
優衣はほんと容赦ないよなーと龍雅が後ろにいた大雅に声をかけた。
「優衣が正しい。やってこない龍が悪い」
「大雅は優衣の味方かよ」
「当たり前のことをいっただけだ、バカ」
ギャーギャー言い合っている龍雅と大雅は双子だ。
龍雅も大雅も共に体育科で、大雅は成績優秀。二人ともサッカー部に所属している、生粋のモテ兄弟だ。
「おい、お前らうるさいぞ!」
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