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全ての試験が終わり、ふうっと息を吐く。同じような吐息が聞こえた気がして隣を見ると、彼と目が合った。
「……どうだった?」
わたしの問いに、まあまあ、と彼は答える。
今日受けた試験は、一年でいちばん重要な試験だった。基準点をクリアしなければ、十二月の実習に参加することができない。
「そっちは?」
「落ちはしないと思う」
祈るような気持ちで、わたしは瞳を閉じた。
「実習、か……」
「何、嫌なの?」
そうじゃない、とわたしは首を横に振る。
「でも、現場には出られないから」
試験に合格しても、女性である以上、本当に望む場所には行けない。そのことが歯がゆかった。
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