6人が本棚に入れています
本棚に追加
撮影が終わり、誰もいなくなった教会の一室で、シオンはようやく東雲に話しかけた。
二人が並んでいる姿は、まるで、これから式を挙げる新婚のように見える。
「貴方は、順番がデタラメなんですよ」
告白する前に、押し倒したり、
無理やりドレスを着せて、プロの写真撮影を申し込んだり、やり方がメチャクチャだ。
「俺はただ、本能にしたがったまでのこと。それと、君への贈り物だ。」
東雲は優しく手を取ると、シオンの左手の薬指に指輪をはめ、そして恭しく指輪に口付けをした。
どうして、こんなことになったのか?
どうするのが、正しかったのか。
ボク達は、これからどうなるのだろう?
色んな思いを込めて、左手を空に掲げ、東雲から贈られた指輪を眺める。
「指輪はロマンチックかもしれないが、本当は怖いものなんだよ。
女性をつなぎとめるために、はめられていた首輪が簡略化されたもの、という説がある」
「そういう情報、どこで調べているんですか?」呆れたようにシオンは返した。
自分の事を調べ尽くす手法といい、東雲には謎が多すぎる。
指輪をグッと引っ張ってみても、ビクリとも動かない。
「簡単に外れないように、少しキツメにあつらえているからね」
「逃げても、拒絶しても... ...
貴方は力ずくでボクを手に入れる。そういう事ですか」シオンはため息をついた。
災難に見舞われたとも言えるような、普通とは違った条件で生まれた、深い関係。
恋のはじまりが幸せとは限らない。
それでも、次第にお互いを認め合う存在になっていくことがある。
最初のコメントを投稿しよう!