子猫が嫌がる

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「シオンに着せたい服ね・・・。色々あって困るな。  君は女物の服でも何でも、違和感なく着こなせてしまうからね。 メイド服にゴスロリ服、白衣の天使なんかも似合うんじゃないのかい?」 「ふざけてないで、ボクの服返してください。」 一体どこに隠したんですか、と憤るシオンは大きめのバスタオルを身体に巻いていた。 風呂から出て、脱衣場にあった服がすべて消えているのに気がついた彼は、すぐにその犯人が東雲と気付いて問い詰めた。 憤って詰め寄るシオンとは対照的に落ちつき払った様子の東雲は、バスローブを身に纏いリラックスした様子で、ソファーに横になって寝そべっていた。 手にワイングラスを掲げて、赤ワインを飲み干す姿は、妖艶だとも言える。 「手錠に首輪、ヒモだって、時には立派な服に見えるしね。  別に服が、布で出来ている必要ないとは思わないかい?」 「東雲さん、今、酔ってますよね... ...? 言動がおかしいですよ。」 ジリジリと、距離を置いて離れるシオンに気がついて、 東雲はゆっくりとソファーから立ち上がった。 「天女が空に帰ってしまうのを恐れた夫は、 入浴中に、羽衣を隠した。とても懸命な判断だと思わないかい?」 僅かに赤らんだ頬に思わず身惚れてシオンの足は止まる。その間に東雲はいとも簡単に二人の距離を詰めた。 バサリと、バスタオルをバスタオルを剥ぎ取られて、思わず立ちすくんだ。 一糸纏わぬ姿に、サッと香水を振りかけられて、肌がヒンヤリとする。 レモンバームの香りがあたりに漂う。この場に似つかわしくない、爽やかで清涼感がある香りだ。 「.....昔、夜は何を着て寝るのかと聞かれて、香水だと答えた女優がいたらしい。 でも、その女優に負けないぐらい、今の君も官能的だ。」 「酔っぱらいは、早く寝てください!! 」 肩に顔を埋めて、クンクンと匂いを嗅ぐ東雲をグイグイと押し戻す。 畳んで置いてあったシャツを手に取って、慌てて羽織った。 「シャツ、勝手に借りますよ。」 東雲の服は、ブカブカで大きさが合わないが、仕方がない。 外国製の香水は強力で、香りがなかなか取れない。その事実に気づいて顔をしかめた。 「......移り香が残っても、後で文句は言わないで下さいね。」とシオンは念を押した。 * * *
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