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「う・・・」
まだ眠り足りない。そう思うのに、太陽の光が眩しい。
ぼんやりと目を覚ましたときは、正午を過ぎていた。慌てて体を起こすと、繭に包まれているように、何層にも折り重なったベールがシオンの手に触れた。
「・・・・・」自分の姿を鏡で見て驚いた。
鏡に映っているのは、白いベールで顔を覆った花嫁姿の自分だ。
波打つように3段のレースに覆われた、純白のウエディングドレス。
そんなシオンを満足そうに見ている東雲は、白いタキシードを着ていた。
「こうやって見ると、まるでカップルが初夜を迎える瞬間だと思わないか?」
東雲がベットの横に座りながら、シオンに手を差し伸べる。
いつの間にか眠っていたベッドの周りに、バラの花弁が散りばめられていた。
・・・・うん。これは夢に違いない。そう思って顔をつねったが、痛い。
ズキリと鈍い痛みが走った。まだ身体に昨日の疲労が残っていて、
今はハネムーンではなく、事後なのだと、頭を抱えたくなる事実を思い出した。
だが現実逃避する前に、一つ確認しなければいけないことがある。
「事情を説明していただけませんか? ......できれば今すぐに。」
ベールで隠れているが、今ならシオンの目に浮かぶ、怒りの青白い炎が見えるかもしれない。
ドレスを脱ぎ捨てようと、背中のチャックに手を回した。
「コルセットで、後ろからキッチリ締め上げて着せたからね。
だから、君一人では脱げないよ? 胸だって、ちゃんと詰め物を入れておいたからね」
悪魔のようにニッコリ微笑む東雲を睨む。
シオンの怒りなんてどこ吹く風という感じで、東雲はチラシを手渡した。
「はい。これ読んで。14時に予約してあるから」
”結婚式 フォトウェディング 本物のチャペルで記念撮影しませんか?
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花嫁の笑顔を100回、撮影いたします ”
…… チラシに書かれた内容を読んで、その場で卒倒しそうになった。
「今からそこに行くからね」と言われてシオンの怒りが爆発した。
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