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「…ええ! 見ての通りで何もありはしないけど、かろうじてここではあれだけが残ったの。死んだおじいさまの、肖像画ね…それがどうかしたの?」
真顔でただ一点を見つめるボサボサした黒髪の丸顔は何も返事を返さないが、それと壁面のこちらも物言わぬ絵の人物とを見比べる娘は、ちょっとだけ意外そうな目つきでこのクロフクの横顔をあらためて見つめるのだった。
「! …ねえ、いま思ったのだけど、ちょっとおじいさまに似てたりするのかしら、クロって? あのおじいさまの真っ白い髪を黒く塗り直してそのサングラスをかけさせたら、ちょうど今のあなたみたくなるんじゃない? あ! まさかあんたこそ血縁関係があるだなんて言うんじゃないでしょうね??」
「…いや、他人の空似(そらに)というやつだろう? 俺としてはそう願いたい。それにもっと似てるヤツを、俺はこの身近に知っているしな…いや、それよりももう別れは告げたのか? 次はいつ戻ってこられるかもわからないのだぞ?」
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