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「ああ、それはもうとっくに…! ここはおじいさまの愛用品ばかりが集められたお気に入りの居場所だったの。わたしにとっても特別な場所だったのだけど、こんなありさまじゃね? でもせめて何かひとつくらいは思い出が転がっていないかとも思ったのだけど、心のいやしい人たちにはすべてが金目の物としか映らなかったのだわ! でもそれなのにあの絵だけが取り残されていたのが、今となってはとっても皮肉よね…どうしたの?」
「…いや、気配が近づいてくる。あれにお別れが済んでいるのはせめてもだったな! そうして早速だが、走る準備は出来ているな?」
「…はっ? いきなり何を言って…!?」
開かれたままの樫の大きな扉の先をこのサングラス越しにじっと見つめるクロフクは、その静かな気配にピンと張り詰めた空気が生じるのが傍目にもわかった。
おなじくそちら目をやるルナは、はっとしてそこに現れた人影を見やる。
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