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「オメーこいつの友達かぁ? てめぇが金渡せば助けてやらんこともねえぞぅぉ?」
「あーハイハイ、お金ねお金」
赤いマフラーの男はポケットを探り財布を取り出す。マフラーは体の動きに合わせゆらりと動く。彼は財布の中身を確認すると、見るからに青ざめた。
「あのー・・・・・・申し訳ないんですが・・・・・・これで勘弁してくれませんかねぇ」
しずしずと申し訳なさそうな顔で不良に近づいたマフラー男は不良の手を握りながら何かを渡す。不良の開いた手に乗せられていたのは500円玉だった。
「ふざけてんじゃねえぞぅぉ!」
「バカにしてんのかオラー!」
「なかなか羽振りがいいじゃねえか・・・・・・というとでも思ったかゴルァー! 貧乏かゴルァー!」
仲井も一緒に叫びたかった。なにしにきたんだ彼は。男は不良の剣幕に一瞬たじろいだが、殴りかかろうと腕組みしながら近づく不良を見て目の色を変えた。温和な眼から、鋭い、猛禽類のような眼へ。戦う者のそれのように仲井には見えた。
せっかくの腕組みを解いて横に殴りかかる不良の一撃を男は身を低くして避ける。そのまま体を両手で押し、路地裏の壁に押し付けた。
「お前、逃げるぞ!」
男はマフラーを首から外して素早く先を結び、仲井に投げつけた。仲井の服に結んだマフラーが当たる。どういう原理か、マフラーは服にピッタリとくっついた。そのまま仲井の体は強く引っ張られる。いきなりのことに不良たちも反応できず、仲井は不良たちから離れていく。
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