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「いやぁ、本当にありがとうございました」
無事に逃げ切った仲井と男は喫茶店にいた。オレンジジュースを飲んでいたマフラー男はストローから口を離す。
「いいってことよ。もっとスマートに済ますはずだったんだけどな」
仲井は男の顔を眺める。鋭い目尻の整った顔立ちだ。艶のある黒髪をナチュラルに額に流している。飄々とした雰囲気も相まって、かなりモテそうだ。
「僕は仲井優介と言います」
「おれはミツキヨシツグ。観察の観、到着の着、善行の善、接ぎ木の接で観着善接だ。よろしく」
よろしくお願いします、と仲井は頭を深く下げる。
「しかし、どうして見ず知らずの僕を助けてくれたんですか?」
仲井の質問に善接は軽く笑った。
「いやぁ、明らかに困ってたからさぁ。そういう人は助けたくなっちゃうんだよね、おれ。そのせいで迷惑だって言われることもあるんだけど」
「いえいえ、そんなことないですよ。少なくとも僕はとても助かりました。それに・・・・・・素晴らしい心がけだと思います」
善接は照れくさそうに頭を掻く。
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