第1章

4/6
前へ
/6ページ
次へ
第1話「トラブル・シューター」 夕暮れ。窓から差し込む夕陽が、部屋の中を綺麗なオレンジ色にへと染め上げる。あれからどの位の時間が経ったのであろうか、部屋の真ん中で男は震えていた。顔を真っ青で血の気が無く、今にも泣きそうな顔をしている。握り締めていた紙を、男はもう一度開く。ぐしゃぐしゃになった紙には、恐らく手書きであろう文字でこう書かれていた 柚木園区の大人の皆様方へ 家族、兄弟、恋人、親友、知り合い、親戚、御友人、はてには警察にも相談できない、相談しても相手にされなかった、そんなお困り事はございませんか? 人に頼れない、法律に頼れない、そんなお悩み事ございましたら、どうぞ御一報を 二十四時間体制でお受付、お引受させて頂きます ほんの数ヶ月前だった。ポストに入れられていたチラシ。こんなチラシ、最初は明らかにヤバいと思った。怪しいものだと。普通じゃない、と。しかし捨てられなかったのは、やはり、近年の治安の悪さ故だろう。心底、残しておいてよかった、と思う中、本当に大丈夫だろうか?という気持ちも捨てきれない。男は紙の下部を見た トラブルシューター 御相談代表ダイヤル コード・ホワイト 030-8822-082 緊急(ワンコール頂ければ直ぐ駆け付けます) 代表ダイヤル コード・ファントム 030-8686-089 震える手で、上の方の電話番号を打ち込む。数回コール音が鳴り、がちゃり、という音と共に聞こえたのは、妙に低い男のような声だった 《御電話有難うございます。どのような御要件でしょうか?》 恐らくボイスチェンジャーを使っているのだろう、流石に肉声で出る訳ないか、と男はは妙に一人で勝手に納得した 「あ、あの、チラシ、見て…その…相談を…」 声が震えて上手く話せない男をフォローするかのように、電話の相手は更に尋ねた 《コードはお分かりになりますでしょうか?》 「あ、え、っと、あ、コー、コードは…コード、ホワイトです」 《畏まりました。件の御相談でございますね。どうぞお話して下さい》 まるで全て分かっているかのようにそう言われ、男は戸惑いながらも、話を始めた
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加