第1章

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しかしいくら隠しても、やはり子供をずっと隠しきれるわけがありません。 桃太郎を見かけた者は、あまりの不自然と不条理に驚き恐れをなし桃太郎を疎外します。 「ひっ、桃太郎だ。気持ち悪い!あっちに行け!」 そう言いながら石をぶつけられることもありました。 「おじいさん、おばあさん、どうして私は皆と違うのです?」 そう言われるたびに辛く悲しく、桃太郎を抱きしめることしかできません。 数年も経つと桃太郎は立派な青年へと成長して行きました。 身の丈は見る見る大きくなり、おじいさんやおばあさんの倍くらいはあります。 ちょうどその頃、都では奇怪な事件が多発していました。 川や海に無残な死体が打ち捨てられるというものでした。まるで鬼に食われたような それはそれは酷い有様で、しかも身包みも全て剥がされ持ち去られるとのことです。 人々は鬼の仕業だと恐れおののき、夜の外出を極力控えたりして怯えて暮らしていました。 桃太郎は言いました。 「おじいさん、おばあさん、私は鬼を退治に行って参ります。」 おじいさんもおばあさんも反対しましたが、どうしてもと聞きません。 仕方なくおじいさんとおばあさんは、桃太郎を旅立たせることにしました。 桃太郎は道中、犬のように卑しい男と、猿のように狡賢い男、 雉のように着飾った優男を家来にしました。 都に着いて、鬼を退治しようと夜を待ちました。 そして、出くわしたのです。 相手は鬼なんかではありませんでした。 身包みを剥がし、そのついでに相手を無残に殺して切り刻んで喜んでいる 悪鬼のような人間たちでした。 その人間たちからは血のにおいがしました。 その途端、何かが心臓の奥深くでドクンと脈打ったのです。 それからのことはよく覚えていませんが、桃太郎の足元は血の海になっていて、 悪鬼のようなやつらの屍が累々と転がっていました。 桃太郎は震えながら跪きました。 そして、その足元に広がる血に顔を近づけ、飲んだのです。 「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉっ!」桃太郎は咆哮しました。 すると犬と猿と雉はニヤニヤ笑っています。 「やっとお前も覚醒したのか」
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