二章

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 しとしとしとしと……  何時までも続く、梅雨の大粒の雨が、紅蓮の行く手の邪魔をする。  梅雨の時期は、まだ寒い。  せっかくだから、と着てみた雨具の具合も、少々まずかったようだ。  雨よけなので防水対策がしてあり、中の衣服が濡れるコトは無かったのだけれども。みのが水分を吸って、かなり重くなっていた。  中肉中背より少々軽量寄りで、平均的な剣より大きい剣を愛用している紅蓮には、もともと重い防具の装備が不向きだ。  それに、彼は普段、実戦で戦うことよりも、儀礼的な演武を衆目に披露するような剣の使い方をしている。  高価な宝玉を惜しげもなく縫いつけた、きらびやかに着飾った衣装は確かに軽いモノではないが、みの、という水を吸った藁(わら)の塊は、紅蓮には荷が重かった。  しかも、薄暗がりの森は足元が泥で、案外と深い。  少し泥が落ち着いているな、と思う所は、つる性の草が密集し、石畳で舗装された道を歩きなれた紅蓮の足を簡単にすくう。  これでは、自分の得意な速さを生かした剣技が使いづらいぞ、と遅まきながら思い始めた頃だった。  藪(やぶ)が、ごそり、と動いた。  紅蓮にごく近い場所で。  動物か……妖か。  柊に会う前に、そのどちらか、もしくは両方に出会うことは、覚悟していたから。  紅蓮は慌てず、滑りやすい地面に気をつけて、何時でも剣が抜けるよう、低く構えた。  ……と、その途端。
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