二章

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「惚れた? 嫁?  オレ、男だし、人間だぜ?  ……寝言は、寝てから言おうな?」 『吾は本気だ!  それに、愛に性別は、関係ない!』 「いや、力一杯、関係している事だと思うけど」  思わず、ぼそっと突っ込んだ紅蓮の声を無視して、猫ウサギは、言葉を続けた。 『人間だろうと、何だろうと、一生愛でて、可愛がってやる。  あんまり贅沢はさせてやれないかもしれないが、それでも吾には食うに困らぬぐらいの蓄えがあるのだ!』  妖が食うに困らない蓄えとは、何だろう?  動物と言わず、妖と言わず、干し肉になった得体のしれないものが、洞窟一杯にため込まれている様子しか想像つかず、なんだかオソロシくて、とても聞けない。  とりあえず、この小さく可愛い妖が、自分に本気になったらしいことは、紅蓮にも判った。  ……けれども。  紅蓮にだって、好みがあるのだ。  少なくとも、それは、もふもふの獣でも、オスでもない。  すぐさま断ろうとは、したのだが。  冷たく拒否すれば、その丸く可愛い目から、涙をだくだくと流されそうで、言葉を選ぶ。 「う、う~~ん、とぉ、オレが嫁?」  それでもなんとなく、もふもふむの下半身辺りに視線が行ってしまうのを見て、猫ウサギは、ぷぃ、と横を向いた。 『ふ……ふん!  モノが小さくて満足出来ぬ、と言うなら百歩譲って、吾が嫁でも構わないぞ』 「……そこら辺、百歩譲ってくれちゃうんだ?」 『惚れた弱みだ、仕方なかろう。  貴様が好きだ。  何でも望むことをしてやろう』  だから、吾とともに居ようと、猫ウサギは、上機嫌に笑い……  紅蓮は、何だかだんだん断れない深みにハマってゆく気がしてきた。  真剣にくどき始めた、猫ウサギの言葉をむげにも出来ず、困っていると、鞘に収まってる剣が呆れたような声をだした。 『……あなたには、これからご予定があるはずでしょう?  こんな所で妖と遊んでいるお暇があるなら、是非ご前進を。  長い間風雨にさらされていたら、お風邪を召してしまわれます』 「あーー、そう! そうだった!」
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