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決して大柄ではない。
白銀の長い髪に、真紅の瞳の顔はとても美しく整っている。
ひげも余分な体毛も無い、しなやかな細身ではあるけれども、薄くてもしっかりとした筋肉がまんべんなくつき、全く女っぽさを感じない。
去年の武芸大会では、模造刀とはいえ真剣に勝負していたのにもかかわらず、殺気も圧迫感も無かった。
淡々とした、植物相手のように薄い印象の対決だったのに。
今、この寝室での対峙では、まるで危険な獣のようだ。
柊の、オスのフェロモン全開の『男の色気』にあてられて、紅蓮は戸惑っていた。
今まで、誰にも感じたことのない、妙な色っぽさに……ドキドキする。
それは、何も。
柊がその見事に引き締まった全裸を、おしげもなく晒し、自分に迫って来ているからだ……と紅蓮は、考えたくなかった。
なにしろ、紅蓮の好みは『女』だったからだ。
男の色気を理解し、愛でる趣味のヒト、ではない……はず。
と。
迫力美男な柊の魅力を前に、今までのポリシーに全く自信の無くなってきた拳を握りしめ、言い返す。
「別に、オレは、お前の裸を見たい、と要求したわけじゃない!
まさか……まさか。
あの猫ウサギの妖が『柊』本人、だなんて信じられなかったから……!」
そんな紅蓮の言葉に全裸の美丈夫は、ほう、と目を細めた。
「……それで?
無力な妖の正体が判り、もう納得したから、いい、だと?
……貴様、この状態の俺を放っておいて一人で勝手に寝る気なのか?」
若干怒気も籠っているような柊の言葉に、紅蓮がふっと、下半身を見ると、放ったままでは、たいへん辛そうな事態になっている。
「は……ははは。やっぱ、ダメ?」
紅蓮の、ひきつり気味な渇いた笑いに、柊は、頭痛をこらえるように寝室の柱に寄りかかり、額にキレイな手を添えた。
「俺は、この姿をさらす前に、きちんと説明をしたはずだ」
「ええっと……普段はヒトと、そう変わらないのに、三カ月に一度の発情期に、抑制剤を飲んで落ち着くと、さっきのもふもふ猫ウサギに大変身。
抑制剤が切れると、人間の姿に戻るけれど、理性が壊れないかねないほど欲望に支配されて大変なコトになる……とか」
「ああ」
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