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「それにしては、今、結構理性的に話をしているじゃないか。
コレだったら、大丈夫。
お互い別の部屋でぐっすり眠れば、明日の朝にはもっとすっきりさっぱりするはずで……」
何が、大丈夫、なのか。
軽く受け合う紅蓮に、柊は、不機嫌そうに眉を寄せた。
「どうしても去年の武芸大会で見た時のまま。
ヒトの姿の『柊』を見たい。
抑制剤を無効化した責任を取ると言ったのは、貴様だ。
本当は、抑制剤は、朝まで持つはずなのを、無理に無効化したのだ。
話を続けるだけの理性は、もう少しなら残っている……だんだん辛く、なっては来たが……」
「そうだっけ?
でも、なんで、薬一つで猫ウサギみたいな、妖になるんだっけ?」
何だか、すげぇよなぁ、と驚く紅蓮に、柊は睨んだ。
「なんだ、貴様、そんなことも忘れてしまったのか!?」
「え…っ! ええと」
もし、柊が本気で怒ったら、ものすっごく怖いに違いない。
飲み慣れない酒を飲んで酔っぱらい、全く聞いていませんでした、とは死んでも言えず。
必死に、柊の『説明』を思い出そうとして、頭をひねる。
そんな紅蓮に、柊は深々とため息をついた。
「……俺は、元々この国の人間ではなく、普通の人間でもない。
外国の……不妊で困る人間のために繁殖された、半妖みたいなものだ、と言った」
「うんうん、そうだった」
「人間以外の力を借りても、なんとしても跡取りの子どもが欲しい、と願うのは大抵、王侯貴族か、一子相伝の技を延々と伝えてゆく芸能関係の人間ども。
そいつらが、俺の本来の相手だ」
「そうだろうね」
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