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「繁殖だの、子作りだのと簡単に抜かしてくれるが、俺は、都合のいい道具じゃねぇ!
子どもを作ることは『家族』を作ることに変わりないじゃねぇか。
コイツとなら、一生付き合える。
そして家族になれると良いな、と思うほどに好きになるヤツは自分で決める。
自分が、一体どれだけ強いのかも知りたかったし。
世界がどんなふうになっているのかも、もっと見てみたかった。
だから、適当に折をみて、神殿から逃げ出したんだが……」
そこまで言って、柊は皮肉っぽく笑った。
「このカラダが……ダメなんだ」
「柊」
切なそうな声色が心配になって、紅蓮が声をかけると、柊はつぶやいた。
「三カ月に一度、色に狂い、快楽を追及する発情期がやって来る。
俺がただの、繁殖用の生物で、神殿の巫女、だと言うなら何も問題ないのだが。
ヒト、として神殿外で暮らすには、すげえ、難しかったんだ」
発情期。
それは、柊がが最もヒトではなくなる時期で、何もかもを奪ってゆくようだった。
発情期以前に柊が培った友情も……愛情も、全てを捨てて本能に従うことになる。
「あんなに、愛するヤツらは自分で決める、と決心したのにいざとなれば手近に居る奴は、誰でも構わなくなる。
一度ノれば相手が、泣き叫んでも終われない。
しかも、発情期期間中は、ヒトを引き寄せ、色に狂わせるモノを撒き散らすようだ。
……正体を隠してヒトの行き来する街中に普通に住んだら、とんでもないことになった」
どう、とんでもなくなったのか、紅蓮は、あんまり想像したくもなかった。
ただ、初めて身を寄せた、閑静な住宅街は、柊の発情期の一期、一週間でだいぶ変わってしまったらしい。
発情期中の柊を抱きたい者が、列をなして押し寄せ。
あぶれた収まりのつかない男たちが、散々喧嘩を繰り返した揚句、風俗店が軒を連ねる妖しい横町に変わったようだ。
そんな事を聞けば、もう十分だ。
あーあ、と天井を見上げる柊が、紅蓮には哀しくて。
「……それで……この森に住むようになったのか」
ため息をつく紅蓮に柊はうなづいた。
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