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先程まで手元にお弁当を抱えていた生徒も少なくなり、ザワザワと騒がしい教室は、徐々に次の移動教室の為に手にテキスト持ち席を立つ生徒が増えてきていた。 腰まで長く伸びた黒髪を持つサエもまた、その艷やかな髪を耳にかけて席を立つ。 教室を出ようとするサエの慌てたような足どりに、前の席に座る少女が一人声をかけた。 「あ、サエ!待って!一緒に行こう!」 声をかけてきた少女、ハナにサエは振り向き、申し訳無さそうに眉を下げる。 「ごめん。レンが……」 少し口籠るサエにハナが呆れたように息を吐いた。 「またぁ?どんだけ暴君なのよあんたのお兄ちゃん」 「ごめん……」 このいかにも気の弱そうな少女は、兄である暴君の言われるがままで、その様子を度々目の当たりにしているハナは、どうにもいたたまれない気持ちになる。 「次移動教室だよ。今からなんて…授業出れるの?」 「うん……どうだろう……」 「はぁ……ホント、どうなってるの?あんたのお兄ちゃんは。来れなかったら適当に言っとくよ」 「ありがとう」
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