第1章 禁断の恋の始まり

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図書館のあとで、けいちゃんの家に行った。図書館から線路沿いに、うちに帰るのとは真逆に進むと、けいちゃんのアパートがある。ワンルームのアパートはいつ行っても、ピカピカだ。 「だって、死活問題だもん」 と、自称埃アレルギーのけいちゃんは言う。でもカーテンを毎週洗うひとり暮らしの大学生って、あんまりいないと思うよ、けいちゃん。 夜はけいちゃんが、パスタ作ってくれた。カルボナーラとミネストローネ。あ、大丈夫、レトルトのソースと赤い缶のスープだから。 イケメンで、掃除も料理も完璧なんて男、あたしは逆に嫌だ。けいちゃんくらいのゆるっと感が丁度いい。 ご飯を食べ終えて、シンクを片付けてから、けいちゃんがコーヒを淹れてくれた。 けいちゃんはコーヒーの味にうるさい。最初にあたしと会った時に、あたしが飲んでたコーヒー牛乳も、けいちゃんにしてみれば、「それはコーヒーとは呼べない」シロモノらしい。 ガラスのビーカーと取っ手のついた外容器。それにコーヒーを抽出するための金網のついたフィルター。 けいちゃんはいつもこのフレンチプレス、ってメーカーでコーヒーを淹れる。手入れが簡単で、コーヒーの甘みが出て美味しい、んだそうだ。 あたしは相変わらず、コーヒーはブラックで飲めないけど、こうやってけいちゃんが淹れてくれたコーヒーは、ミルクを50%以上入れれば飲めるようになった。大進歩なのに、 けいちゃんはお子様だな、って笑うけど。 お湯を注いでから、コーヒーを蒸らす時間は4分。 「ねえ、けいちゃん、さっきの話」 あたしは図書館でけいちゃんに聞いた話を蒸し返す。学校の先生になる、って。あの時はふざけて茶化してしまったけれど。 「ん?」 「先生、って高校? 中学?」 「んと、高校の日本史教師。親父の知り合いのところで、急に空きが出たんだって」 「地域とか配属って決まってるの?」 「横浜市の職員募集だったから、横浜の学校になるんじゃないかな」 「ねえ、もしかしてうちのガッコ、来たりしないよね?」 そうじゃなくても、高校の先生の彼女が、女子高生って世間的に見たらどうなんだろう。 「え、大丈夫だろお? 千帆のガッコ、偏差値高いし。市内に高校いくつあると思ってるの」 楽天家のけいちゃんは、あははとあたしの不安を笑い飛ばす。 「出来たよ、コーヒー」
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