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「まさか同じ学校になるとはなあ。ちょっと俺も混乱してて、今は何も千帆に言えない、ごめん」
「…うん」
「でも、千帆と別れたいとか別れようなんて思ってないから」
けいちゃんの鼻先があたしの鼻先にぶつかる。あたしのカップと同じシルエット。
でも、あたしとけいちゃんの鼻はミッキーとミニーほど高くない。すぐに、触れ合う角度が変わって、お互いの唇が重なりあう。
いつもは恥ずかしくて、あたしの舌に絡みつくけいちゃんの舌に、あたしは遠慮がちに応えるだけなんだけど、今日は、今だけは。
恥ずかしさより、けいちゃんが好き、って気持ちの方が強くなった。けいちゃんの首に腕を巻きつけて、舌を絡め合って吸い合う。
「好きだよ、千帆」
キスの合間のけいちゃんの囁き。あたしを舞い上がらせるはずのその言葉が、却ってあたしを悲しくさせた。
あたしも好き。でも…。
結論を出さないまま、その日はバイバイした。
けいちゃんが送ってくれる、って言うのを拒絶して、あたしは線路沿いの道を泣きながら帰った。
始業式の日まで、けいちゃんからは何も連絡がなくて、あたしからもしなかった。忙しいのかもしれないし、あたしとの距離を置きたいのかもしれない。
どっちでも、どうでも、良かった。
あたしが次に、けいちゃんに会ったのは、始業式の日、あたしのクラスの担任として、壇上で挨拶する時だった。
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