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「けいちゃん、今日は何借りるの?」
「予約した本の受け取りくらいかな」
「ありゃ珍しい。いつも最大貸出冊数まで借りるけいちゃんなのに」
疑問に思ったことをそのまま口に出すと、けいちゃんの顔が少し曇った。
「ちょっと忙しくなりそうなんだ。研究室に残るつもりだったんだけど、教員の空きが出来て潜り込めそうで…」
だから大好きな本も読めなくなるってことか。ん?あれ。教員?
「え、けいちゃん、先生になるの?」
「…なんで、笑いこらえてるの?」
「だ~って、似合わないんだもん。教えられるの?」
「失敬な、免許はちゃんと持ってるよ」
けいちゃんこと、遠藤慧史(けいし)は、付き合って2か月のあたしの彼。
当たり前に出会って、当たり前に恋してた、あたしたちはある日突然当たり前の恋人同士じゃなくなる。
禁断の恋、秘密の関係。
でもまだこの時のあたしは、ふたりにそんな困難が降りかかるなんて、予想さえもしていなかった。
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