第1章 禁断の恋の始まり

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けいちゃんとあたしが知り合ったのは、半年くらい前のこの図書館だった。 古文の課題を片付けるのに、古典文学全集の棚、なんて普段近づきもしない場所をウロウロしてたあたしの耳に、ひっきりなしにくしゃみの音が聞こえた。 (風邪ひいてるのかな) 最初はそう思ったけど、2回3回なんて可愛いものじゃなく、あたしがそのくしゃみに気がついてから、数えてみたら11回もしてた。 気になる! あたしはそのくしゃみの方に近づいてってみる。 グレーのPコートの背中が目に入った。背中を折り曲げて、口元に手を当てて、くしゃみを連発してたその人は、あたしという存在に気がついたのか、くるっと振り返る。 柔らかそうなくるくるした前髪が、眉にかかって、その下の目はすっと切れ長で優しげ。イケメンさんだあ。あたしのテンションがぐっと上がる。 「大丈夫ですか…」 おずおずと声を掛けると、その人は気まずそうに目を細めた。 「す、すみません…うるさくて」 と言いながら、またひとつくしゅん。 「あ、あの…ティッシュ持ってませんか?」 そう言われて、あたしは持ってたバッグからキャラクターの絵柄入りのティッシュを取り出した。こんな可愛いのごめんね、そう言いながらその人はぐじゅぐじゅの鼻をあたしの前でかむ。半分くらい消費してスッキリしたのか、鼻の下を指でこすりながらお礼を言われた。 これが、出会い。 けいちゃんという彼氏の存在を唯一知ってる、親友の七海に話したら、大爆笑された、けいちゃんとあたしの初対面。
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