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けいちゃんとあたしが知り合ったのは、半年くらい前のこの図書館だった。
古文の課題を片付けるのに、古典文学全集の棚、なんて普段近づきもしない場所をウロウロしてたあたしの耳に、ひっきりなしにくしゃみの音が聞こえた。
(風邪ひいてるのかな)
最初はそう思ったけど、2回3回なんて可愛いものじゃなく、あたしがそのくしゃみに気がついてから、数えてみたら11回もしてた。
気になる! あたしはそのくしゃみの方に近づいてってみる。
グレーのPコートの背中が目に入った。背中を折り曲げて、口元に手を当てて、くしゃみを連発してたその人は、あたしという存在に気がついたのか、くるっと振り返る。
柔らかそうなくるくるした前髪が、眉にかかって、その下の目はすっと切れ長で優しげ。イケメンさんだあ。あたしのテンションがぐっと上がる。
「大丈夫ですか…」
おずおずと声を掛けると、その人は気まずそうに目を細めた。
「す、すみません…うるさくて」
と言いながら、またひとつくしゅん。
「あ、あの…ティッシュ持ってませんか?」
そう言われて、あたしは持ってたバッグからキャラクターの絵柄入りのティッシュを取り出した。こんな可愛いのごめんね、そう言いながらその人はぐじゅぐじゅの鼻をあたしの前でかむ。半分くらい消費してスッキリしたのか、鼻の下を指でこすりながらお礼を言われた。
これが、出会い。
けいちゃんという彼氏の存在を唯一知ってる、親友の七海に話したら、大爆笑された、けいちゃんとあたしの初対面。
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