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「だって、ちゃんと言ってくれてない」
「え、言ったじゃん」
「全然ちゃんとしてないぃぃ」
そっかなあ。とけいちゃんは浅く溜息をついてから、あたしの方を見た。視界にはお互いの顔しか映らないくらい、近づいてくる。こんな至近距離で、真顔で見られると、あたしは蛇に睨まれたカエル。
けいちゃんの目線に縫いとめられたように動けない。けいちゃんは、そのままあたしに囁く。
「好きだよ、千帆。だから俺の傍にいて。俺と、付き合ってください」
「…は、はい」
返事をしたあたしが、恥ずかしくて俯こうとするその顎を、けいちゃんは素早く捉えて上向かせる。
またけいちゃんの顔が近づいてきたと思ったら、そのまま唇を重ねられた。
こうして、あたしとけいちゃんは恋人同士になった…。
思い出すだけで、にやける。ほわんほわんと、今なら空も飛べそうなくらい、気持ちが舞い上がってた。
でも、幸せを満喫できたのは、最初の2ヶ月だけ。大変なのはこれからだった。
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