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「空くん!」
「走らなくていいって!」
心配する俺をよそに、笑顔で駆け寄ってくるこの子は、一つ年上の明星。あどけない笑顔と幼い容姿からは、とても歳上になんて見えないだろうけど。俺だって、一緒にいると自分が年下だなんて、とてもとても思えないんだから。
他校に通う明星との帰り道の待ち合わせ。手をつないでの放課後デートは、極上の幸せな時間。
全速力で走り寄る姿に、不安を覚えながらも見ていると、その笑顔がいきなり視界から消えてしまった。
ああ、やっぱりだ。助走もバッチリの状況で転んだものだから、今のは絶対に痛いはずだ。
慌てて抱き起こすと案の定、両膝はすりむいて血が流れ出している。何回同じ事を繰り返しても、この子は学習してくれないのだ。俺を見つけては、走り始める。どれだけ痛い思いをすれば気がすむのかとも思うけど、なんだか何かが抜けたような性格の、そんな明星は俺から見ればひたすらに可愛い。
立ち上がった明星が、パンパンとスカートについた砂ぼこりを払い落としている。
「あー……痛かったね。大丈夫?」
足に流れる血を拭いながら声をかけても、頷くだけで何も言わない。いつもなら泣きべそかいて甘えてくるのに。
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