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掃除が終わって、田畑は安定にゆきをどこかへ連れてった
もはや部活なのでは無いかと思うレベルで毎日喋ってる
学校を出て帰路に着く、私の家までは私の足で徒歩30分。いつもは自転車だけど今日はパンクしていたから歩きだ。
月が綺麗だわ、なんて興味もないのに歩きながら眺めていたら、後ろからすごい早く歩く足音が聞こえて
私の横で、私の速度と同じになった
これは不審者でしか無いと、恐る恐る顔を見れば荒川だった
「なんだ荒川か!びっくりした!趣味の悪い変態かと思った!」
「そのスピードで家まで辿り着けんの?」
「そこまで遅くないでしょ」
なんてなんやかんや言いながら
荒川は隣で歩き続ける
一緒に帰っている、ということで良いのだろうか
なんて時間なんだ
「イツキがマジだとして、原野に告ったとして、もしそうだとしたら付き合うの?」
急にイツキさんの話をぶっ込まれ、戸惑った
なんの感情も無さすぎて逆に回答に困る
顔を見れば、少し真面目な顔で、そっちにキュンとしてしまった
「話合わないもん、好きでも無いし、おこがましいかもしんないけど、付き合わないよ」
そもそもそんなことはあり得ない事は荒川が一番知ってるはずなのに
どうしてそんな事聞くんだろうか
「濱野といい感じだしな」
「はい??」
「最近普通に喋ってるし、番号交換できたじゃん、良かったな」
側から見たらそうなのか
私がまだ好きなことが前提だったら
そりゃそうか
「濱野くんはもう小柄の先輩と付き合う付き合わないの時期楽しんでるとこじゃん、負け惜しみでもないけどもう意識して無いから普通に喋れるってだけで……」
無意識で必死に否定をしていた
その前提はもう忘れて欲しかったから
好きな相手は、濱野くんでは無いから
「またまた」
「いやほんとだってば」
「楽しそうにしてんじゃん」
「そりゃ楽しいよ、気は合うと思うもん」
「じゃあ良いじゃん、押せば」
「他に好きな人できたの!」
荒川の口が止まった
私の思考も止まった
時が止まったのかもしれない
でも足は動き続けてる
「え、だれ」
「……教えるわけ無くない?」
口が滑る、ってこういう事を言うんだ
全力で滑っていった
自分自身にすら、認めていなかったのに
「同じクラス?」
「良いじゃんもう、そんな興味ないでしょ」
「ここまで来たら気になる。あぁ、鈴木?」
「誘導尋問始まるやつじゃんこれ」
めちゃくちゃ掘り下げてくる荒川に、私の額は汗で大変なことになった
顔も熱いけど、暗くて良かった
「あーわかった俺だ」
笑いながら言う荒川
ギクって音が多分本当に鳴ったと思う
私にとってそれは悪い冗談がすぎた
「そんなわけないでしょ」という返しが出かかったけど、押し戻した
そんな大嘘はつけなくて
「もうやめよ、この話!好きな人居るけど永遠に封印するつもりだから!」
「は?封印?」
「絶対好かれるわけ無い相手だから。以上!おやすみ!」
荒川を置いて走った。ひたすらに走った
確か荒川の家はこの辺なはずだから。
心臓は止まりそうだし、顔は熱いし、強制終了しないとおかしくなってしまいそうだったから。
こんな気持ちバレた日にゃあ
荒川だって迷惑だと思う
家に帰り、早々に自分の部屋に入って枕に顔を埋めてあーーーーーーー!ってした
恋なんてするもんじゃ無い
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