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「後夜祭、一緒におど、おどっ」 「……………無理」 編み針を操る手を止めずに女子生徒が答えた。 端的な拒絶に足音は遠ざかる。 「また断ったんですか」 図書委員の男子生徒も本から目を離さない。 「忙しいんだもん」 「もう、ファッションショーは終わったのに」 「だからだよ。」 オレンジ色を夜が食らいつくす。 「もう読めないんじゃないの」 「そっちこそ、もう編み目見えないでしょう」 どちらからとも言えないタイミングで 少しだけ笑う。 「後夜祭始まっちゃったね」 「そうですね」 「今編んでるの、間に合うと思う?」 「何にですか」 「あなたに好きって言うのに」 「間に合わせるんでしょうね、あなたなら でも」 立ち上がって、男子生徒は腕を伸ばす。 ダンスの音楽が校舎にも流れ込む。 「そういうことは手を止めて、目を見て言うことですよ」
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