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約束の木
それから一ヶ月後、晴太は記憶が戻らないまま…雪と一緒にいる日々が増えた
楽しい事、面白い事が沢山あって
それから…一年が経過した
雪はツインテールをやめて、ロングヘアとなった
これで少しは大人に近づけたっと自信に満ち溢れていた
雪はもう中学二年生で俺は…高校に進学できなかった
勉強内容とか、ほぼ足し算や引き算
漢字に至っては、ようやく小学校三年生レベル
そんな人が先ず入れるわけが無かった。
そんな日々が過ぎたある日…雪は俺に告白をしてきて付き合う事になった
「雪、そんなにくっつくなよ」
「えー、先輩から離れたくないの」
「いつもそればっかだなぁ…可愛いけど」
「もぅ! 先輩のバカ!!」
そんな会話をしてると
二人の目には…あの木の下に黒髪少女が目に映る
「…先輩あれって」
「多分…俺が見とれていた原因」
「ぶー、私の方が魅力でしょ?」
「妬くなよー、魅力だからさ」
「えへへっ、ありがとう!」
黒髪少女はこちらに気づき…歩きながら口を開く
「…君晴太…と雪…ちゃんだよね…?」
「…そうだけど貴方は誰?」
「私を覚えてない…?」
「ごめん、俺は記憶がないんだ…」
「三人で、仲良く…居た日々…」
雪の脳裏はふと蘇る
それは…雪が小学校前の話
晴太と黒髪少女は、付き合っていた子
そして雪も、混じって二人の間に入って仲良く遊んでいた日々があった
雪はゆっくりとその名を口にした
「もしかして…秋音ちゃん…?」
「秋音…?」
「うん、私達三人で遊んでいたんだ…この公園の木下でね」
すると、黒髪少女は足をピタッと止めて涙を頬から流した
「やっと…気づいてくれた…! 雪ちゃんありがとう…!」
素顔が見えなかった黒髪少女の顔が明るく光りその顔が見えた。
黒曜石の様なクリっとした眼差しで左右の色が違うヘアピン二つ付けていた。
「ふぅ、これで顔を見せられるわ」
雪はその顔を見てすぐに反応を示した
「秋音ちゃん…!」
「うん、ようやく会えたね三人で。まさか二人が付き合うなんて想像してなかったけどね」
「だって…秋音と晴太がイチャついてるの見てだから羨ましかったんだよね…」
「あはは…生きてた頃はそうだったね。でも、晴太君ったら私を見とれていて事故になったから焦ったよ私。あの世に逝かせたくなかったから…頑張った」
二人は会話が盛り上がりを見せる最中
晴太の記憶が徐々に戻るーー。
幼少期、秋音と晴太は付き合っていた
世間的にはマセガキと言うが、そんなことは関係なかった。
それから小学生となった晴太と秋音
その小学校生活最後の秋
秋音が登校しなくなってた
来る日も、来る日も…晴太の前に現れることは無かった
その時、晴太は不自然を抱いていた
先生が秋音の机に、花瓶に花が入った置物を…置いてる姿を放課後教室で見たのだ
『せ、先生…何を…?』
『晴太君!? いつからそこに…』
『秋音は…死んでない。なのに、何でそんなことをしてるんですか…?』
『…』
『先生! 答えてください! 先生ーー!!』
そう叫んだ俺を先生は、何も言わずに教室から出て行った
その後、晴太は秋音の机の中を見た
何やら一通の手紙がそこにあった
その宛名は…晴太君へと書かれていた
その手紙を開いた俺は…その文を見て
ある病院へと走った
手紙にはこう書かれていた
『晴太君へ、私達小さい頃からずーっと一緒に居たね。幼馴染って言うんだろうけど、そんな君に私から言えるのは…君が大好きだったって事だよ。どんなに離れていても、どんなに時が経っても、君をきっと忘れない。だから…私と別れて…、君の幸せを奪いたくないそれが例えどんなにに辛くても。私は…この病気に負けてきっと君を悲しませるだろうから…ごめんね晴太君』
そんな文を書いてた秋音ーー
そしてもう一枚の紙があり病院の地図だった
馬鹿野郎!! なんで、別れなきゃならないんだよ!! 誓い立てたじゃないかよ!!
晴太は秋音の病気を知っていた
先が長くなくても、ずーっと一緒に居たかった
なのに…なんでこうもズレるんだろう
幸せを奪いたくないなら、離れるなよーー
必死に走って、秋音が入院してる病室を開けた…酸素マスクで息をする秋音
半目で晴太の顔を見て、涙を頬から通して落としていた
『ばか…なんで…来たのよ…』
俺は無言で秋音のベッドまで近寄って、椅子に座って口を開いた。
『秋音…』
『晴太…君…』
『酷いじゃないか…なんで直接言わなかったんだよ…』
『だって…君の事だから…嫌だって言うでしょ…?』
『当たり前だろ、人の幸せを願うくらいなら…こんな別れ方しなくてもよかったじゃないか…』
『わかってるよ…でもこうしなきゃ…君の幸せが…』
『俺の幸せは秋音お前なんだよ。どんな時でも、常に隣でいて、認めあった仲じゃないか…だからってこんな…こんな別れ方は…』
俺の声は震えていた、その両手をズボンにギュッと握った手の甲に目から落ちた水滴が落ちる。
その手を秋音は優しく乗せた
手の色は白くて冷たかった
『私最低だよね…君を泣かせるつもり無かったのに…。私も君から離れたくないよ…』
秋音はそう言って泣いていた
俺は秋音の頭を撫でて、病室から見える大きな木に目が止まり言う
『秋音、もし君が居なくなったらーーこの木を目印に俺は会いに来るよ。君を忘れない為にーー何度でも』
晴太はゆっくりと膝を付いて秋音を眺めた。
つまりこの木は、約束で秋音を忘れない為に
「秋音…お前だったんだ…。通りで見とれていたんだ俺…」
「あまりにもじーっと見られるから恥ずかしかったけどね。もう、私の元彼氏さんは何時もそう…私の顔眺めて笑ってるの。それが一番好きだった」
「秋音ちゃぁぁぁんーー!!」
「雪ちゃん泣きすぎだよ…」
「だってぇ、切なすぎるもん…ふぇぇぇんーー!!」
秋音の体が強い光を放ちだす
晴太は驚き顔をして雪は泣き崩れた。
秋音は今にも泣きそうな顔をして言う
「約束果たせたし、私も次の一歩踏まなきゃね」
「秋音…」
「うん?」
「また会おう」
その一言と秋音に見せたしょうがないなっと思わせる表情をした晴太。
それを見た秋音は、ゆっくりと笑みを浮かべてこう言った
「うん! 約束だよーー」
秋音はゆっくりとその姿が光に包まれるように消えていった…。
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