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放課後の教室で都巳夜が僕の机を両手で叩いた。
「ねぇ、静海君。私知ってるんだ?」
その瞬間少しドキリとした。
彼女は一体何を知っているというのだろうか。
「最近――謎解きの姫っていう女の子の噂があるんでしょう?」
それを聞いて僕は一時的に安堵する。
なんだ、そんな事か。
都巳夜はそういった噂話や不思議な話が大好きなのだ。
「謎解きの姫に食べられた、って言うんだよね? 不思議な現象や出来事に出くわすようになった子の事を」
「その謎解きの姫がどうかした?」
僕は横に掛けた鞄を手に持ちながら立ち上がった。
「どうかしたってわけじゃないよ? ただ、本当にいるのかなぁって。それに謎解き姫って事件を何でも解決しちゃうんでしょう? ささぁーっと。警察とかよりも早いらしいよ」
得意げにどこから仕入れて来たかも分からない情報を僕に向ける。
噂話やオカルト、信用性の薄いものを信じない僕だって、そのくらいの情報は知っている程に興味はあった。
「誰も見たこと無いらしいし、いないんじゃない?」
苦笑いにも似た笑みを零しつつ、僕たちは教室を後にする。
「えー! 静海君は夢が無いなぁ」
んな事言ったって。僕は僕の見解を述べただけだ。
「でもでも、謎解きだったら静海君も出来るよね!」
「出来ないよ。僕のは謎解きっていうか、ただパーツが揃えば想像出来るってだけで、もしかしたら全然見当違いな事を言う事だってあるよ」
「うーん、よく分からないよぉ」
彼女はそう愚痴を零すが、きっと心の奥底では理解しているのだ。
本物は僕では無いと。
だから、彼女は僕を愛さない――。
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